―五年前―


『お父さん、今からどこにいくの?』
『お父さんのお友達の家にいくんだよ。いいこにしていなさいね。』


お兄ちゃんは何かを知っているようだった。
窓の外を見て、ボーっとしている。


『お兄ちゃん、どうしたの?顔色悪いよ?』



『うん、大丈夫。』



全然大丈夫そうじゃなかった。

目はすごく腫れていて充血していて、目の下にはくまがあった。

当時お兄ちゃんは18歳。
全て聞いていたのだろう。



お母さんと離婚すること。そして―。



今から会いにいく相手のことを。