身支度を済ませ、家を出た。

行き先は、このマンションを借りていたところ。

個人経営らしいが、人当たりのいい受付の人に、

物件もたくさん扱っている。

そこなら、どうにかいい所を探してくれるかもしれない。


「いらっしゃいません…あら、鈴木さん」

私の事を覚えていたようで、私の名を呼んだ受付嬢に、

笑顔で会釈した。


「引っ越し場所を探しているんですけど・・・」

「まぁ、もう引っ越すんですか?何かありましたか?」

「…特に何も」

好きな人から逃げる、なんて言えるわけもなく。

私はそう言って答えを濁らせた。

…探すこと2時間。


「困ったわね…鈴木さんが言っているような物件が、

見つからないんじゃ、他をあたってもらうしか・・・」

私の顔を見て困ったように笑った受付嬢は、しばらく考え込んだ。


「・・・もう「あ!!」

断り、帰ろうとしたら、受付嬢があっと声を上げた。

「何か?」

「実は、私の住んでる所、部屋があり過ぎて困ってたの。

ここのオーナーが格安で貸してくれてるんだけど、

鈴木さんが嫌じゃなかったら、私とルームシェアでもしない?」

この人と、ルームシェア?・・・。