廊下をとにかく走って行く陽介。

「廊下は走らないでください」

看護師の檄が飛ぶ。


「すみません、でも妻に赤ちゃんが」

陽介はそう言って謝るとまた走って行く。

…息を切らせながら、陽介は分娩室に急いだ。



オギャー・・・オギャ―・・・


思っていたよりも早く、赤ちゃんが産声を上げた。

立会分娩を希望していた陽介はがっかりしつつ、

でも、生まれた事への喜びに満ちていた。





一通りの身支度をした陽介は、分娩室の中へ。


「悪かった…間に合わなかったな」

陽介は愛に喋りかけた。

汗を一杯かいている愛の額を、ハンカチで拭う。


「…いいの、元気な女の子だって、抱いてあげて」

カンガルーケア中の我が子を、愛は陽介に抱かせた。


「…可愛いな…頑張ったな愛」

「うん・・・とても安産だったって先生が言ってたよ」