「あなたは、会社の為に、私と政略結婚をした。

だから、陽介にも、同じ人生を歩ませようとした」


「私の道は何も間違ってなどいない。実際、陽介も生まれ、

会社も業績を伸ばしてる・・・結婚に愛など必要ない」


「・・・だから、あなたは陽介の事は分からないと言ってるのよ」

春子は、お茶菓子を少しだけつまんだ。

のんびり話す春子に、誠治は苛立っている。

今まで、自分にタテなどついてきたことのなかった春子が、

こうやって自分に意見するのが気に入らない。



「さっさと結論を言え、春子」


「私は貴方が好きだった・・・でも、貴方は私に愛などくれはしなかった。

だから、陽介に愛情を抱く事が出来なかった・・・可哀相な陽介。

結婚に愛は必要不可欠なのよ、政略結婚などただのエゴに過ぎない。

あの子の選んだ人生は、素敵な物になるはずよ?・・・だから、陽介の邪魔は絶対にさせない。

今まで愛してあげられなかったから・・・その罪滅ぼしをしたいの。

貴方が、私を切り捨てでも、陽介は守りますから」


「・・・春子」

…まさか、自分を愛していた事など、気づきもしなかった誠治は、

言葉を失っていた。…ただの政略結婚でしかないと思っていたから。