中学2年生のあれはーーー夏休みに入る1ヶ月ほど前の日。
いつも通りにたわいない話をしながら、学校から家まで真也があたしのことを送ってくれて。
お礼を言って、「じゃ…」と家の中に入ろうとしたその時。
「丹夏っ!」
真也があたしのことを呼んだ。
「…なにー?」
あたしはなんだかいつもと違うものを感じて、玄関のドアに掛けた手を外し、真也の方にかけ戻る。
「あの…さ。
俺の行きたい高校、決まったんだ」
「あ、そうなんだ。どこ?」
真也が名前を上げたのは、この辺りでダントツトップ、全国でも10番以内には入ろうか、というほどの進学校。
学年の違うあたし達にまで噂が流れる程の実力を持つ真也でも、今までのようにのんびりしてはいられない、ということは、あたしにでも分かった。


