沖田円×緑黄色社会インタビュー

今回のコラボを記念して、沖田 円さんと緑黄色社会のvocal長屋晴子さんに、小説のこと、楽曲のこと、またMusic Video撮影時のエピソードなど、いろいろとお話しいただきました!

Q.まずは今回のコラボのきっかけとなった『きみに届け。はじまりの歌』が生まれたきっかけについて、沖田さん教えてください。

沖田さん:次作の構想を練っているときに昨年度『神様の願いごと』がきっかけでコラボすることになった安城を舞台にした作品を書こうということになりました。安城市といえば、「安城七夕まつり」なので、七夕まつりをメインにした物語をつくろう、そこから生まれました。

Q.この物語は「自分らしく生きる」ということが主題になっていると伺ったのですが、具体的にはどんな想いを伝えたいと思って書かれたのでしょうか?

沖田さん:自分らしさをみつけること、そして自分らしく生きることがこの物語のテーマですが、意識して表現していったというよりはストーリーを考え、カンナのキャラクターをつくっていくなかで、自然に浮かんできたテーマでした。高校生という子供でもない大人でもない成長過程の主人公を書いていくことになるので、自分ってなんだろうとか、どうやって歩いていけばいいんだろうっていうような、この世代の悩みを乗り越えて、成長していく話にしようって思いました。


Q.ご自身が高校生だったり、迷いのなかにあった頃のことは思い返しましたか?

沖田さん:カンナや登場人物に自分自身を投影したわけではないのですが、キャラクターをつくっていくうえで多少自分の経験をプラスして作っていきました。


Q.長屋さんは、この作品を読んでどうでしたか?作中歌どんなイメージでつくられましたか?

長屋さん:まず初めて読んだときに、自分のことのように感じました。カンナの悩みや想いが、自分の抱えていた感情と似ていて、さらにバンドの編成まで似ていて、本当に自分の話なんじゃないかと思うくらい共感して、すぐに物語の世界に入り込めたんです。なので制作していくなかでは、カンナの想いを届けることも大事だけど、それってわたしの想いを届ければ、それがカンナの想いを届けることにつながるのかな、そこにつなげられたら良いなって思えてきたんです。なので、詞の内容に関しては悩んだというよりは自分の気持ちそのままだったので、すらすらと作りました。ただ、いままで頼まれて詩を書くことがなかったので、その部分に関しては自分だけのものではないから、悩みながら作りましたね。作品内容にはとても共感できたけれど、そこが初めてのことで難しい部分でした。


Q.お二人はこのコラボをきっかけにお互いの作品や楽曲を知ったのでしょうか?

長屋さん:今回のコラボをきっかけに沖田さんを知って、まず前作を読ませていただきました。そのときは、とても読みやすく、高校生の頃やその年代の子の気持ちを表現するのがうますぎる!わかる!という印象で。のめりこめる心情描写が多くてすぐ好きになりました。


沖田さんの作品は、その世代の方だけでなく、その世代を経てきてそれを思い返す世代にも共感できることが多いですよね。


長屋さん:そうですね、発する言葉や描写がすごくリアルでした。


沖田さん:わたしはもともと、緑黄色社会さんを好きで聞いていました。なかでも『始まりの歌』がとても好きで、わたしのイメージするカンナにぴったりだと思ったし、そんなカンナの歌を、長屋さんに歌ってもらいたいと思ったんです。そしてコラボが決まってから初めてライブに行き、実際にステージの上に立ち、演奏しているみなさんや歌っている長屋さんを見て、カンナたちがいる!と思ってしまったんです。『きみに届け』のキャラをあてはめたわけではないのだけれど、イメージにぴったり合っていてリトルシンガー自体ももちろん素晴らしいものに仕上げてもらったので…。わたしだけではこんな形にはつくりあげられなかったし、緑黄色社会のみなさんに協力していただいて、この本が完成したのだなと思っています。

Q.小説を書いていくなかで、実際に楽曲を聞いたりはしていましたか?実際に演奏しているシーンや楽曲を小説に落としていくことは難しくなかったですか?

沖田さん:カンナが歌を歌うシーンを書くときにはなにかしらの曲を聞くと書きやすかったので、BGMとしてよく緑黄色社会さんの楽曲を聞かせていただいていました。実際に書いていくときは…、わたし自身が楽器も弾けないし、歌も得意ではないので経験だけではなかなか簡単には書けなくて。読む人にとってウソくさくなく書けるかどうか、読んでる人にイメージしてもらえるかどうかが難しく、悩みながら書きました。


Q.長屋さんは楽曲制作について、どんなふうにイメージを膨らませていったのでしょうか?

長屋さん:沖田さんが執筆していくのと同時に曲をつくっていたのですが、やっぱり曲のタイトルは重要だと思いました。

「リトルシンガー」というタイトルの言葉はもっともキーになるものなんですけど、他にも打ち合わせで沖田さんにリクエストしていただいた言葉を並べて、それらを中心に組み合わせていきました。そのなかでも「大丈夫」という言葉を入れてほしいというお話が強く残っていたので、それは必ず入れようと思ったんです。

Q.沖田さんが「大丈夫」という言葉を入れてほしいとリクエストしたのはどういう想いからだったんですか?

沖田さん:自分に甘いところもあるんですけど(笑)どんなときであっても、自分自身を否定してはいけないと思っているんです。悩んでマイナスに考えてしまうときも、自分に「大丈夫」と言い聞かせて、自分自信に肯定を与えることは、どんなときであれ前を向くには重要なことだと思っていて、わたしのなかではよくキーワードとして使っていますね。


Q.今回の高校生サポーターの活動はどうでしたか?ティザーMVを見た感想を聞かせてください。

長屋さん:わたしの知らないところで動いてくれていたものだったので、高校生サポーターの方々が知らない間にいろんな人に協力してもらってたのを完成した状態で見て、感動しました。今までもMusic Videoを作ってきましたけど、今まで以上に多くの人が関わってつくりあげてくれて、とてもうれしく思いました。


沖田さん:活動の概要を話には聞いていたけど実際に関わっていなかったので、どんな感じになるのかと思っていたんですけど、(ちゃんと形になるか心配もあったが)本当にたくさんの方が協力して関わってくれていて、みんなの笑顔と想いがつまった映像ができあがっていたので、すごく良かったと思いました。あの映像には映っていないですけど、つくるために準備など、高校生が一生懸命に頑張ってくれたことに感謝だし、そのおかげで私自身も良い経験ができて、うれしいです。


Q.高校生が実際に知ってる人たちだけでなく、知らない人にも協力を仰いで、街が好き、人が好き、だからこれまでとは違うところへ向かっていきたい!という想いが伝わってきましたね。おふたりは高校生のころ、そういった活動などは経験ありますか?

長屋さん:中学生のときにボランティア団体に所属していて、地域の掃除をしたり、部活とはまた別にやったりしていたんですけど、なんとなく恥ずかしかったりしました。良いことをするのが恥ずかしいときでもあったんですかね。でもやっていました。


沖田さん:わたしが高校生のときにこういう企画があっても参加するタイプではなかったんですけど、今思うと高校生でこういう経験ができるのはすごい貴重だと思った。家族や身近な大人以外と接しながら、何かを作り上げるということに若いうちに関わるのはすごく良い社会経験になると思います。


Q.MV撮影の時にも、高校生サポーターが準備やアシスタントをしてくれていましたが、いかがでしたか?

長屋さん:本当に熱心にやってくれていて、私ももっと頑張ろうという気持ちになりましたね。いろんな世界に接することで、少しでも彼らの世界が広がればいいなって。関わる人が多い作品はすごく楽しいですし、新鮮な気持ちで臨めました。


Q.沖田さんは撮影現場にお邪魔したとき、高校生サポーターに正体を明かさずだったんですよね?

沖田さん:そうですね、ただのやじ馬みたいに現場に行かせていただいて、彼らの活動を見ていたんですが、指示されたことを一生懸命に真剣にやってくれていてすごいと思いました。

Q.実際に安城市での撮影はどうでしたか?MVのみどころは?

長屋さん:撮影の最後のほうは雨だったんですけど。丈山苑では、撮影の合間にかたつむりとカエルを探したりしてたのしんでました(笑)イチ押しのシーンはデンパークですかね。景色がきれいだったり、撮影で使った風船がカラフルで。庭(秘密の花園)でソロで歌っているシーンは、そこに咲いている花もきれいで、変わった植物もたくさんあって。いろいろな発見がありました。ぜひ直接行って見てもらいたいです。


沖田さん:知ってる場所だからこそどうなるのか?どんな絵が撮れるのか?って気持ちだったんですけど、だからこそ新しい発見があって、地元の人がみても楽しめる映像になっていましたね。改めて、良い街だと思いました。


Q.楽曲の話に戻りますが、長屋さんはどんなメッセージを込めて歌われていますか?

長屋さん:カンナの決心を出したいと思ったんです。気持ちが切り替わる瞬間。何を歌いたい、誰に届けたいのか、と考えていて…行き着いた先が自分の決心の歌でした。それはカンナの決心の歌でもある、というのをみなさんに届けたいと思ってつくりました。あとは、高校生が歌う曲(という設定)なので、フレッシュさと、元気になれるような曲調と明るいテンポをイメージして作りました。

Q.沖田さんは楽曲を聞いてどうでしたか?

沖田さん:詩については、想像していたものを思いっきり超えていて、すごく良い仕上がりになっていて、とてもうれしかったです!ふわっとしたイメージしか伝えられなかったと思っていたのに、本当にカンナが伝えたかったであろう気持ちを詩に込めてくださっていて、はやく曲として聞きたい!!と強く思いました。そして楽曲になってからは、さらに想像を超えていて…もう、それは感動しかなかったですね。待ちに待っていたので、やっと完成してやっと聞けた!メロディも歌声もみなさんの演奏も、本当に想像を超えて素晴らしいものだったので。すぐにお気に入りの曲になりました。頭から離れないし、耳に残るとても良い曲ができたと思いました。


当時のメールではテンションがマックスでしたよね。


沖田さん:語彙力ゼロでしたね(笑)『僕何』のコミカライズの時もそうだったんですけど、わたしは文章を書くことしかできなくて。それ以上のことってできないんですよね。でも、別のプロの人たちが、さらにその世界をひろげてくれるっていうのは本当にすごい経験ができたなって。めちゃくちゃうれしいです。自分の表現を超えて形にしてもらったことが、本当にありがたいです。

Q.長屋さんのなかでカンナの決心や小説の世界観は、どのようなプロセスを経て形になっていったんですか?

長屋さん:プロットの段階ですごく共感をしていたので。原稿を読んでそれが明確になったっていう感じです。初期段階からイメージは確立されていて、すんなりと入り込めましたね。


Q.それでは最後に、読者のみなさんに向けてメッセージをいただけますでしょうか。

長屋さん:音楽経験がないという沖田さんの描写がすごいリアルですごく共感したので、これを読んだら音楽にちょっとでも興味を持ってもらえるんじゃないかなって思います。そうなってもらえたら、たらアーティストとしてとてもうれしいです。


沖田さん:いま悩んでる人もそうでない人にも、いろんな人の背中を推せるような作品になりたいという想いを込めて書きました。いまでも、何年後かでも、読んでくれた人の背中を押して支えられるような作品であればと思いますので、ぜひ読んでいただければうれしいです。


お二人とも、ありがとうございました!


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