長い長い夢を見た。

それはまるで走馬灯のようで、自分は死ぬかもしれないとさえ思った。
しかしどこかで死なないという確信があった。


ぽっかりと空いた穴を沿うように、螺旋階段が奥へ奥へと続いている。

そこはまるで重力というものが無く奇妙な感覚がした。
階段を走り行くのはあの兎、Mr.ハニー。


『待って。行かないでよ。私のこと助けに来たんでしょ?』


アリスの発する声はまるで煙のように消えていく。
その声はハニーに届くことは無く、ひたすら二人の距離は遠のいていくだけだ。

アリスは走る。

階段を駆け抜け、深い穴を下へ下へと降りてゆく。




階段に沿って絵が飾られているのに気が付いた。
金の額縁に入れられた数々の絵画。

しかしよく見ればそれは―――。


『・・・小母さん?』


それはアリスの育ての親の顔だった。

先程まではハニーを追っていたせいで気付かなかったが、どれもアリスの知った顔ばかりだった。


アリスの小母、小父、その娘、それに学校の生徒。
そして・・・。


『ヴァネッサ・・・。』


すると突然ヴァネッサの絵が動き出し、口を開いた。


『あんた、親に愛されていなかったのね。』





そこで、目が覚めた。