ケータイ小説 野いちご

海へ...

カオル
出会い

放課後、何もすることのないあたしは、浜辺でぶらぶらと海を見るのが日課になっていた。

滋賀県には何もない。テレビも映らないし、ラジオも入らない。

本屋も一軒もないし、もちろんゲームショップなんてない。

2008年とは思えない程の、文化的孤立地帯。それが滋賀県。

あたしにできるのは、寄せては帰る、波を見るだけ。

ずっと、波を見ていると、一人のオトコに話しかけられた。


「海が好きなの?」

「ううん、ぜんぜん」

 
オトコは漁師風だった。


「潮の匂いは?」

「大嫌い。臭い。ごはんがまずくなる」


あたしは犯されると思った。

でも、漁師は怒らずに、アッハッハと笑った。

そのとき、初めて気付いたけど、オトコはあたしが初日に見た若い漁師だった。

近くで見ると、やっぱり、カッコイイ……。

ううん、でも、ダメ。

第一次産業従事者だもの。


オトコは言った。

「オレ、カオル。お前、オレの仕事を手伝えよ」

あたしはカオルの船でバイトすることになった。

< 8/ 59 >