電話をしに外へ行った深崎。


残された、俺と深崎の父ともう1人の男…多分弟か兄と女の子。


気まづい空気が流れていた。



それを破ったのは、深崎のお父さん。



「君は智美の…」


「初めまして、染谷 聖です。

一応、智美さんの会社の社長をしています」



俺が社長と言うとお父さんは、頭を勢いよく下げた。



「いつも娘がお世話になってます」


腰が低いのか、ずっと頭を下げっぱなし。

隣にいた男は


「姉ちゃんの会社の社長が、なんで家に?」

と、疑問点をぶつけてきた。



……別に理由はない。


俺もなぜ、一緒に行くと言い出したのかわかってない。

自分のことなのに。



「今朝、ちょっと智美さんと一緒にいまして
送ってきた流れで、今に至ってます」


まともな理由も思いつかず、取り敢えずこう答えるしかなかった。



「今朝?どうして?」


「仕事のことでちょっと、どうしても早急にお願いしたいことがありまして」


別に、お願いしたい仕事なんてないし

ましてや昨日まで接点なんてなかった。


だけど、これしか言えなかった。



「ふーん?」


弟は納得してなさそうだけど、それ以上聞いてくることはなかった。