「…罪深きもの。汝幸いなり。汝赦されん。」
 憲治が背後の声に軽く痙攣して振り向く頃、第2音楽室は紫紺のフィルターの中にあった。廊下から暮色とともにやってきたのは、哀しげな影を眉間に滲ませた「少女」だった。
「…死んじまった。『聖菜』が、俺のたった一人の『彼女』だったのに…、」
 「聖菜」のカタチをしたモノの傍らでうづくまって泣いていた憲治は、「少女」を見上げてうめいた。
「…俺が、抱きしめても、キスしても、目ぇ覚まさねぇんだよ…。大好きな先輩がよぉ、こうやって、抱きしめて…、」