「チサ……今日突然現れた人なのに彼氏候補に入っちゃうの?」

「入るよー。だって合コン行ったって、突然じゃないにしろ初対面じゃない?

それで彼氏候補に入るんだよ?一緒だよー」


……そう言われると妙に納得してしまう。

私が堅く考え過ぎてるのかな?



片付けを終えた私はチサと一緒に店を出た。

店を出るとチサとはすぐに道が別れる。


「じゃぁ明日。いつもより丁寧にメイクしてくるから!」

「……はいはい。じゃぁ明日は蓮さんの話し相手頑張ってね」


私は呆れたように、気合いが入っているチサへ手を振った。


大通りを歩いて帰る私は蓮さんがディスプレーを務めるデパートのショーウィンドウへ差しかかった。


シャッターは下りていて、隙間もないから光も漏れてこないけど……

恐らくこの中で彼は仕事中なのだろう。



少しだけシャッター前で立ち止まって耳を澄ませてみる。


作業の音が聞こえるかな、なんて思ったけれどそんなはずもなかった。


「聞こえないかぁ……」


残念そうに呟いた自分の声で我に返る。


「……なんで私まで蓮さんのこと気にしてるんだろ……!」


自然と足を止めてしまった自分に気付き一人で気まずくなる。

コートの襟元を手繰り寄せながら足早にデパートから離れた。