“перо болезни”


ロシア語で病名が決められた。

直訳して“ハネの病”。


ハネが放つ粉が体内に入り込むと発症してしまう不治の病。

発症から数週間で背中に羽根が生える。
一見美しいものだけれど、その中では人間の全神経を侵食され、やがて死に絶える。


しかし死ぬ前に、精神を病み自ら命を絶つものが多い。


それは病による羽根の発生、目・髪・血液の変色で「人間ではないものになってしまった」という絶望だった。


発症後に襲ってくる「人間として死にたい」という叶わない願い。

そう望んでいる間にも、
羽根は人の神経を蝕み、
ハネは、人間ではないものを作り出す。





ロシアで発症してから何年も経つのに、どの国もワクチンや薬を完成することができずに朽ちていった。


日本も例外ではないのだろう。

人の減ったこの国で、僕らができることなどたかが知れている。


そうしていずれ訪れる死を、もう11年も前から知っていたのだ。



ちっぽけな僕の命など、

誰に影響を及ぼすことなく消えていくのだと。