とは言ったものの名付けなんて生まれて初めてのことで……。
どんな名前がいいんだ?
ボールペンを持った手をジッと見つめていた。
生まれてくる我が子の名前を考える父親は、こんな心境なんだろうか……。
うーん……そうだなぁ……。
手帳の白紙のページを見つめる彼女。
その横顔が美しくて…………。
あっ!いい名前、考えた!
「キミは女の子だから……女の子の名前によく使われる……この字と……」
俺は手帳にボールペンで“美”という字を書いた。
彼女に説明したのは半分ホントで半分うそ。
キミの横顔が美しかったから……。
だから“美”という字を書いたんだ。
「で、キミと出会った日は雨で……」
俺は“美”と書いた字の隣に“雨”という字を書いた。
「“みう”って名前、どうかな?」
俺が書いた字をジッと見つめる彼女の顔を少し覗き込むようにして言った。
彼女は美雨と書かれた文字を見つめたまま小さくコクンと頷いた。
「良かった……」
喜んでくれたかどうかわからないけど、小さく頷いてくれたことが嬉しかったんだ。
美しい雨と書いて美雨(ミウ)。
俺がキミに付けた名前……。