実のところ、祐子の男関係はよく把握していなかった。

彼氏がいることは察していた。残業中に彼らしき人から電話がかかってきて席を外す事はよくあるし、祐子と会社帰りショッピングに行ったり、食事に行ったりしたとき、突然、祐子の携帯に彼らしき人から電話がかかってきて、「あ、ちょっと待ってね」と場所を移動したり、席を外したりする事があった。「彼氏?」と聞いても、「うん、まぁ・・・」とお茶を濁したような返事をする。

でも、それが祐子のスタイルで自然に受け止めていたし、疑問に思ったこともなかった。

会社の同僚の友達の良さは、学校時代の友達と違い、暗黙の了解で相手が嫌がりそうなプライベートな話題には、お互い、あまり深く立ち入らないところが心地いい。

もちろん過去には、同期で学校時代の友達以上に濃厚な付き合いの友達もいたが、彼女たちが結婚して、子供ができ退社した後は会う回数が極端に減り、お互いの生活スタイルが変われば、電話や年賀状での付き合いに変わっていった。

後輩の数も増え、先輩としてのポジションも違和感がなくなってきたころには、むしろ、
ビジネスライクの延長的な距離感の付き合い方の方が肌に合ってきた。

だから、祐子は今の私にとってベストフレンドなのである。

歳を重ねれば重ねるほど、友達の質や付き合い方が変わっていくのを実感していた。

しかしながら、最近、会社と家との往復の日々が続いていて、満たされないものを感じていたし、同僚から彼氏とのデートの話や結婚の話を聞くと、焦燥感や淋しさは否めない。

このままでいくと、羨ましさが嫉妬に変わり、渇いた心が日常の潤いまで無くし、ますます不安や心配が増幅していくのではないか・・・、かろうじて今はまだぎりぎりのところ
にいるが、本当にやばい状態になってしまうのではないか・・・と、ふとやりきれない気持ちになる時がある。

何か習い事をしたり、資格を取ったりしようかな・・・と思っていた矢先に祐子からのお誘いがあった。