いつから気付いてたのか。

なんで追い掛けてきてくれたのか。

疑問ばかりが湧いて出る。


「・・・なんで、泣いてんだよ。」

隼人は走ったせいか、荒くなった息を落ち着かせながら、そう言った。

「え?」

驚いて、頬に手を当てる。確かに、冷たいものが伝わった。

「こっち来て。」

そう言って、隼人はあたしの腕を引っ張って、玄関口とは反対の方へ歩きだした。通りすがりの人たちが、あたしたちを不思議そうに見ている。


あたしは何も言えないまま、黙って隼人の後について行った。握られた腕の温かさが、出来れば一生消えなければいいと思った。






隼人に連れられて来たのは、トイレの前にある待合室のような場所だった。かなりスペースがあるから、人はあまりいないし、ここは店の通りから離れているから、結構静かだ。


いつくか並べて置いてある椅子に、隼人は座った。

「座れよ。」

隼人は穏やかな声で、あたしに促す。

あたしは怖ず怖ずと、椅子をひとつ空けて座った。


「・・・はぁ。」

ため息が聞こえたと思ったら、隼人はあたしの隣に座り直した。

あたしはただ、固まることしかできない。緊張して、身体が震えた。顔もきっと、赤くなっている。


きっと、隼人を傷付けたのに。どうして隼人は、あたしに対して何も言わないんだろう。


沈黙が、二人を包んでいる。

物理的な距離は、4年前に戻ったように近いのに。

なのに、違和感が消えない。