「何か、いやなことでも、あったの?」


聞いてはいけない。
そんな気がした。

でも、好奇心に負けてしまって、ついそんな言葉を発してしまった。


「……。」

淨弥君は一瞬、寂しそうな顔をしたが、すぐに元の表情に戻った。


「寒くない?」

「え?あ、うん、少し」



「温めてあげる」

「………!!!」


淨弥君はあたしの手を引き、自分の胸にあたしの頭を優しく押し付けた。



「せ、淨弥君っ「シー…」

耳元で囁かれたその声に、ゾクッとした。


淨弥君の胸の中は、温かくて、洗剤のいい香りがした。


「……。」

ゴクッと唾を飲み、できるだけ平常心を保とうとした。

……が、


心臓はあたしの言うことなんて全く聞かず、
うるさく反応する。



「……あったかい…」

小さい声でそう言って、淨弥君はあたしを更に、強く抱きしめた。