翌朝。

桜夜は沖田より先に目覚めた。

総司より先に起きられた…槍が降るかも。

寝顔…初めて見た。感動…。すっごいキレイ。

桜夜は思わず見とれてしまった。

「私の顔に何か付いてますか?」

「そっ、そっ、総司っ。いつからっ?」

「おはよう。よく眠れましたか?」

スルーかいっ。

「今日から仕事があるのでしょう?早く支度した方がいいですよ。もうナミさんは来てる頃でしょうから」

「えっ?もう?すぐ行くっ」

桜夜は急いで着替える。

沖田に手直しをしてもらい、走って台所に向かった。

「おはようございますっ」

既にナミは朝餉の支度を始めていた。

「おはよう。じゃ、早速やってもらおうかね」

ナミの指示に従い、必死に女中の仕事をこなす。

炊事、洗濯、掃除、炊事…。いくらやっても終わりが見えない。

ナミさん、一人でやってたの?あり得ないんですけどぉ。

途中、沖田や藤堂がちょっかいを出しに来たが、相手にする余裕などなかった。

一日があっという間に終わる。

日が暮れると桜夜は疲れ果てて、布団も敷かずに寝てしまった。

「桜夜、布団に入って。風邪をひきますよ」

沖田が揺すっても起きる筈もなく―

仕方なく沖田は桜夜を抱き上げ、布団に寝かす。

―疲れる位がいいのかもしれませんね。何も考えずに眠れるでしょう―

それからの桜夜は毎日早く起き、仕事をし、寝てしまう。そんな生活が続いていた。

何より、桜夜はナミと一緒に食事をするのが楽しかった。

女中は隊士と一緒に食べる事はなく、台所の一角に作られた畳の上で食べる。

沖田は一緒に食べようとよく誘いにきていたが、そこだけ特別扱いは嫌だと断っていた。

ナミとの会話は美沙子を思い出し、泣きたくなる時もあったが、それでも何だか暖かい気持ちになれた。

夢中で働いていたお陰でだんだんとリズムが掴めたのか、要領もよくなってきて、桜夜にも少しだけ余裕が出てきた。

屯所にも馴れ、着物も一人で着れるまでになった。

誰かと一緒ならという条件付きだったが、食材の買い物も行かせてもらえた。

もうじき桜夜が屯所にきてひと月が経とうとしている。

穏やかな日常が終わる日が近づいていた。