特にこのタワーが目的で行列に並んだ訳ではないのだが、まぁ他に目的があった訳でもない。

一時間待ちという長蛇の列にも、それほど苦もなく待っていられた。

行列がだいぶ進む頃。

「あれ?永瀬君じゃないですか」

知った声に名前を呼ばれる。

振り返ると、鹿だかトナカイだかわからない角のついたカチューシャに、ノースリーブ臍出しミニスカートという恥ずかしい出で立ちの少女が立っていた。

「あれ、朝霧じゃないか。何だその赤面ものの格好」

俺は笑いながら軽く挨拶した。

…朝霧美琴。

俺と同じ高校のクラスメイトで、まぁたまに口を利く程度の間柄だった。