「新年早々机に貼り付いてたんですね。根っこが生えますよ」

土方に御猪口を渡しながら桜夜が言う。

「総司はいいのか?」

さっきから会話が成立してないんですけど…。

「土方さんに心配されなくても平気ですよ」

土方にお酌しながら桜夜が答える。

暫しの沈黙。

「なぁ、お前の時代に行ったのが総司でなく俺だったらお前はどうしてた?」

―俺を愛したか?―

い、いきなり何言ってんの?今日のひじぃはおかしいよ…。

「ホント、さっきからどうしちゃったんですか?」

ひじぃがタイムスリップしたら、か…。

長州の者か!なんつっていきなり刀、抜いてそう。

桜夜が少し笑いだす。

「どうしてたか何て分かりませんけど、多分刀は突き付けられてたでしょうね」

土方はフッと笑うと

「そうか」

と言い、御猪口の中の酒を呑み干した。

「でも、土方さんは頭がいいから、きっと早く順応してたと思いますよ」

桜夜が空いた御猪口にまた酒を注ぐ。

「ふん。褒めても何も出ねぇぞ」

「猿扱いがなくなればと思ったのにな。残念です」

桜夜が苦笑いをする。

それからは他愛のない話が続き、いつしか桜夜の持って来た酒が空になった。

「終わっちゃいましたね」

「ああ。もう行けよ。総司が心配してんだろ」

…何だか今日はひじぃの方が心配なんだけどな。

「じゃ、行きますね」

桜夜が立ち上がる。

「なあ、お前は俺の最期を知ってんのか?」

も~、ほんっとにどうしちゃったの?これじゃ心配で置いてけないじゃん。

「忘れたんですか?切腹ですよ」

桜夜は土方の前に座り直す。

「私じゃ力になれませんか?」

―いつまでも…情けねぇな―

土方は煙管をくわえる。

「余計な気を使わせたな。すまん」

天井に向かい煙を吐くと

「お前に切腹させられちまったら世も末だ。俺はそこまで腐っちゃいねぇよ」

そう言ってククッと笑った。

「もうっ。ホントに心配してんですからねっ」

桜夜は再び立ち上がる。

「また呑みたくなったら言って下さいね。次からは有料ですけど」

そう言って土方の部屋を後にした。

―そろそろ踏ん切りをつけなきゃならねぇな―

土方はポツリと呟いた。