楽しい会話で盛り上がり、気が付けばワインも3本目だった。成瀬さん、お酒強いんだな〜とは思いつつ、あたしも久しぶりのワインについついグラスを傾け、ほろ酔い気分だった。



すると団体のお客様が入ってきて、お店の中が賑やかになってきた。


マスターも忙しくなり、手一杯って感じだった。


「よっしゃ、一肌脱ぎますか!聡さん、エプロン借りるよ!風間さん、ちょっと待っててね。」


成瀬さんはジャケットを脱ぎ出し、エプロンを着けてカウンターの中に入ってしまった。


マスターが厨房で忙しくしている中、成瀬さんはシェーカーを握り、次々と注文を受けたカクテルを見事な手さばきで作り始めた。



洗練されたその動きや美しい身のこなしは、あたしの言葉を失わせるのに充分だった。



ポカンとして見つめていると、成瀬さんはあたしにカクテルをスッと差し出した。



「どうぞ、お客様。こちらはブルームーンでございます。」


そのカクテルは、淡い青紫色のショートカクテルだった。

「綺麗…」
一口飲むと、花のような香りが広がり、ジンの苦味とレモンの酸味が爽やかだった。


「どう?ひとりでほうっておいてしまったお詫び。」



「そんな…全然!見ていて楽しかったから…これ、すごく美味しいです!成瀬さん、ありがとうございます!」


あたしは淡い間接照明にグラスを照らしながら、その美しい色をうっとりと眺めた。