「んっ…」


ゆっくりと頭が覚醒されてゆく、寝起きの感覚。


ぼんやりとした頭の中で、彼はもう戻っては来ないのだろうか…、なんて考えてしまった。


過呼吸を起こすぐらい追い詰められたのに、気絶しかけている人間を置いて逃げるような男だったのに、それでも執着している自分にびっくりし、そして自嘲した。



ふ、と自分の状況に疑問を持った。



うつ伏せに倒れたのに、仰向けになっている身体。

洋風なホテルに居たはずが、今は和室になっていて、自身も布団に横になっていた。


―――――なぜ?