二度と抜け出せない深みへと嵌まるように・・・





閉ざされた社長室は、私が落ち着くまでの間、静寂に包まれていて。



それらを取り巻くのは、冷めやらぬ余韻とホワイトムスクの香りだけ…。





「もう二度と…、オマエを傷つけない。

だから、俺の傍を離れるな――」


「ッ・・・」


不意に清涼な声で囁かれた言葉は、不安を一気に打ち消すモノで。




「あれだと、守れたとは言えないが…。

絶対に離れないと約束してくれ、良い…?」


両肩を持たれて引き離されたあとの確認は、心をリペアする材料になる。




「っ…、はい・・・」


YESを紡ぎ出す返事が上擦るほど、とても嬉しかったの。



「フッ…、約束は守れよ?」


「うん・・・」


見上げた貴方の表情は煌々としていて、こちらまで笑顔になれた。




ブラウンの瞳を見つめるだけで、早鐘を打つ鼓動・・・




あまりに満たされすぎて、幸せが零れていたのかな…?





世上にも耐えられる力を、貴方に享受されたのにね・・・