拓海の婚約者の存在を知らされて、後藤社長に脅されたトキ。


その日から…、カウントダウンが始まっていた。



グラスから零れそうな地点で、表面張力によって耐える水のように。


内心ではいつも、ギリギリの所で堪えていたけれど。


ポツンと投下されたモノから、とうとう溢れ始めたの。



どれだけ縋りたくて、伝えたかったか・・・


あのカンケイに、どれだけ傷ついていたか・・・


愛してるって、言葉にしたかったか・・・


怒涛のように押し寄せて来て、もう止められない。



「っ・・ひっ・・・くっ・・・」

私のキャパシティを、遥かに越えてしまっているの。




“拓海の婚約者は、この私なの”


“貴方は、拓海のストレスの捌け口”


辛すぎる別離に留まらず、婚約者に釘を刺されたうえ。


貴方のキモチを知らされてしまったから・・・



真実のあとに構えていたモノは、裏切りという仕打ち。


拓海との大切な思い出まで、容易く打ち砕かれていく。


ズキンズキンと響く心音が、虚しい除夜の鐘のよう。




「蘭、もう泣くな…」


「っ…、うぅっ・・・」


泣きたいワケではないのに、涙が止まらない。


どうすれば良いのか、分からないよ・・・