この胸の高鳴りも、今日で最後になる。



貴方以外のヒトには、何の感情も芽生えナイから――



どれだけ、パンドラの箱に押し込めてみても。


頑丈なハズの鍵も、いつの間にか解けてしまう。


ムリヤリ忘れるコトなど出来ないと、気づいてしまったの。



だから今日だけ、目一杯に想わせて下さい。


貴方に身を寄せるコトを、許して下さい。



心に秘めるまでの猶予を、私に与えて下さい――




ゆっくりと瞳を閉じると、トンと身を任せた。


甘くて、優しくて、包まれたかのように錯覚させられる。



この香りを深く…、身体に刻み込んで欲しい。




細身のようでいて、筋肉質の体躯をした社長。


この胸に寄り掛かるだけで、すぐに安心出来てしまう。



それほど貴方の存在は、大きすぎるけれど。


貴方の傍にはいられないと、重々承知している。



だけれど別離までの時限など、今は忘れてしまいたい・・・




「オマエは、何も心配するな――」


「っ――」



すぐに醒めてしまう、まやかしの言葉だとしても――