ビュッと音を立てたと思ったときには、
すでに風の矢が沙弥を襲っていた。


「うわあっ!!」


沙弥は呪文を唱える間もなく、
その攻撃を食らった。


《これでも手加減しているのですよ?》


ウサギの言う『手加減』のおかげで、
風の矢は体の表面をかする程度だった。


が、腕や脚、脇腹には、
擦り傷ではなく切り傷ができていた。


「…だから……。
あたしは…呪文…を…たくさん知らないんだって!

ましてや…
そんな…ものを、
使いこなせる…はずない…じゃん!」


脇腹の傷口を右手で押さえながら、
ウサギに文句をつけた。


さすがに初心者相手にやりすぎだ、
そう思ったのだ。