失礼だけれど、これなら素人でも撮れそう。


あんなに大勢の前で、撮る必要ナイのに!


ムダに緊張を強いられて、ご機嫌を損ねていた。



『ハハ、そう怒るなよ!

良い思い出になるだろ?』


『っ、それは…そうだけど』


いつだって、アノ笑顔には負けてしまう。


どんなに怒っていても、彼には敵わなかった。





『蘭はいつでも、笑っていてくれよ?

必ず、此処に戻ってくるから――』


そう言い残し、アメリカへ向かった拓海。



私は待ち続けると、当然のように誓ったの。



東条家という名前の凄さを、全く知りもしないで――




一人になった私に、彼が残してくれたモノは。


陶器で出来た、薔薇モチーフのフォトフレーム。



そして、貴方への揺るぎないキモチ・・・




幾度と無くソレを、パンドラの箱へと押しやっても。


いつの間にか、スルリと抜け出してしまって。



途切れるどころか、留まる処を知らない。




「…っ、ヤダ・・・よぉ・・・」



寄り添う写真を抱き締め、床にへたり込んだ。