そうして、重いカバンを落とさぬよう。



自分のキモチを握り潰すよう、手にギュッと力を込めていた。





社長はそんな私を置いて、スタスタとガレージへと歩き始める。




朝の慌しい最中だというのに。


私はいつも、彼の後姿に見入ってしまう。



広くて、大きな背中を追うように・・・





「蘭、早く行くぞ…」


「あ……、はい――」



すると社長は、いつも途中で立ち止まって一声掛けてくれる。




ジッと私を捉えるブラウンの瞳と、ただ目が合うだけで。



「っ・・・」


萎れそうな心は、一気に熱を帯びていく。





それでも、この感情は胸に秘めたまま・・・。




今日も私は早足で、彼の背中を追いかけて行く――