「おい、紫乃! そんなこといきなり話すと頭のおかしい奴だと思われるぞ」
 しかし、なだめる徹さんを振り切り、紫乃さんの話は続く。
「閻魔大王は死人番号と手元の資料を照らし合わせて、その人が天国行きなのか、それとも地獄行きなのか。どんな罰を受けるのかも含めて裁きを下すんだけど……。私はかなりのイレギュラーだったみたい」
 私はそこまで紫乃さんが話終わると、慌てて口を挟んだ。
「ちょ、ちょっと待って下さいね。急な展開過ぎて頭がついていってないんですけど……つまり、今の話からすると紫乃さんは……死んだということに……」
「そうだよ、言わなかったっけ?」
 随分と軽く話されるあり得ない話に、私の頭は再びショートし始める。
「ほ~ら言わんこっちゃない。誰だって何の前置きも無しに話されたら分かんないに決まってるだろ? まあつまりね、紫乃は昔、一度死にかけた事があってさ。その時の臨死体験として、あの世の出来事を覚えているって訳なんだよ」
 ……まだ半信半疑だが、徹さんの説明もあって、ようやく頭が整理できてきた。
「ビックリした~、私はてっきり紫乃さんが恐怖でおかしくなってしまったのかと思いましたよ」
 斎条さんが胸を撫で下ろしながら話す。
 よかった。変に思っていたのは私だけじゃなかったようだ。