天を駆ける騎士の姿が、差し込む光が、アリスの目に焼きついていた。
具合は大分よくなり気分も落ち着いてきた。

何よりハニーが無事に戻って来てくれたことに安堵を感じた。


「心配することなど何一つありませんよ、アリス嬢。
貴方は享受することに成功されたのですから。」


眉間に皺を寄せるアリス。

するとハニーが胸元にそっと手を当てた。


「その証拠に・・・ご覧下さい、宝珠の輝きを。」


ハニーが手を当てた部分にアリスも触れてみる。

丁度鎖骨の下辺りに何か固いものがあるのに気付く。
最初に触った時はなんだか体が強ばった。

自らの体に石のようなものが突然生まれたのだ。

アリスはゆっくりとシャツのボタンを少し外し、その異物を確認した。


「これが・・・宝珠・・・。」


それは手のひらにすっぽりと収まるほどの宝石のようなものだった。

七色かと思えば透明にも見える不思議な色。
まるで呼吸をしているかのように、石の中で光の粒が踊っていた。

まるで蛍のように浮遊する光。
点滅しながら彷徨う様は生き物のようであった。


「私、ちゃんと享受できたんだよね?
これでいいんだよね?」


アリスが懇願するように尋ねると、ハニーはゆっくりと頷く。


その笑顔を見た瞬間、アリスの心の枷が外れた。

何かが不意にこみ上げる。


アリスはぽろぽろと涙を流し始めた。