「絶対!中島だよ。あたしが、中島を見間違うはずがないじゃん!」

妙に、自信満々の理香子に、少し呆れながら、

「まあ…そうかもしれないけど…」

一応、肯定した。


蘭花は、すぐにテレビに体を向きなおすが、2人の会話を聞いていた。

「あっ!なんか信じてないでしょ!」

「信じてるよ」

段々とこたえるのが、邪魔くさくなってきた楓。


蘭花は、2人の会話を分析していた。

(あれは…広陵学園の姫!姫が、好きといえば…あの中島か?確か…母方は…)

考えを巡らしていると、蘭花はいつのまにか、2人の会話が止まっていることに気づいた。



「あ、あれって…黒谷蘭花じゃない?」

楓のひそひそ声に、理香子は首を捻った。

「誰?」

「誰って…今売り出し中のアイドルよ。知らないの?」

「興味ない」

理香子は、そういう存在にまったく興味がない。逆に、楓にきいた。

「あんた…アイドルに興味あるんだ…」

意外そうな理香子に、楓は顔をしかめ、

「別にないけど!姉妹校の生徒だよ。学校でも、有名よ」

「そうなんだ〜。ふぅ〜ん」

理香子は、両手を首の後ろに回すと、旅館の奥に向かって歩きだした。

楓はため息をつき、心の中で思った。

(まあ…アイドルでもない…あんたが、有名の方が凄いだけどね)

均整で理想的なプロポーションをした理香子の後ろ姿を見つめながら、そうりゃあそうかと、楓は納得した。


理香子の後を、小走りで追う楓が、フロントからいなくなったのを確認すると、蘭花はソファーから立ち上がった。

「姫が、ここにいて…あいつの血筋も、この地に来ている?」

蘭花は、理香子達が去った廊下を見つめ、

「やはり…そうなのか?」

しばらく凝視していた。