「結城徹子!?」

あたしは思わず、口に出してしまった。

「乙女ガーディアンは、女神を直属で守る戦士。その力を、すぐに発揮できるように、男がかけたら、女になるのよ。身も心もね」



「結城徹子…」

あたしの背中に、悪寒が走った。言葉に出すだけで、気持ち悪い。

べ、べつに、世間にもしかしたら、いっしゃるかもしれない結城徹子さんがキモいわけでなく…

前にいる相手が気持ち悪いのだ。

まるで、兄がオカマバーで働いてる時の…源氏名みたいじゃない。

でも、徹子はないわ!捻りがないわ!


あたしは乙女ソードを握り締めると、上段に構え、

「名前に!捻りがないだろ!」

そのまま、渾身の力を込めて、乙女ソードを振り落とした。

「そうね」

乙女ダイヤモンドは、避けることもなく、乙女ソードを肩に受けた。

「徹子は…かわいくないわね」

乙女ダイヤモンドは顎に手を当てて、考え込んだ。

「え」

乙女ソードを振り抜くことなく、刀身が真っ二つに折れた。

「じゃあ…里香にしましょう!あんたが、里奈だから」

乙女ダイヤモンドは微笑みながら、斬りかかってきたあたしの鳩尾に拳を叩き込んだ。

「な」

全身に痺れが走った。

「里奈…知ってた?あんたの名前…あたしがつけたのよ」

「ああ…」

あたしの耳に、その言葉は聞こえていたが、脳には達しなかった。

あたしは、一撃で意識をかられた。

変身が解け、膝から崩れ落ちていくあたしを、左腕で受け止めると、

乙女ダイヤモンドは眼鏡を外した。

「里奈…」

哲也は気を失ったあたしの顔を、覗き込んだ。


乙女ガーディアンに長時間…変身していると、哲也は本当の女になってしまう。

そうなると、変身を解いても、男には戻れない。

男の哲也が、乙女の力を使うには、そのくらいのリスクが必要であった。