「……そうだね」

もうこれ以上、怖がりで争いを好まない自分でいれば、相棒の足を引っ張ってしまい、捕まってしまう可能性の方が高い。諜報員は目を閉じ、もう一人の自分に声をかけた。

(ねえ、交代してもらってもいい?)

(もちろん!大暴れしてやるぜ!)

目を開いた時、その諜報員は先ほどのような弱気な目はしていなかった。挑発的に笑い、銃に手をかける。

「相棒、思いっきり暴れてやろうぜ!」

先ほどとは別人の諜報員がそう相棒に言えば、相棒も銃を構えて「おお!」と笑う。そして二人は一斉にテーブルの陰から飛び出す。そして、相手がトリガーを引くよりも何秒も早く発砲する。諜報員二人から放たれた銃弾はマフィアたちの体を貫き、辺りに血が飛び散った。

「最ッ高!!」

走りながらマフィアたちを次々に撃ち、諜報員は笑う。

二人を救出するために仲間が出してくれたヘリコプターのプロペラの音が近付いてきた。



シリウスが目を開けると、大人びたモノトーンの家具が置かれた自分の家のベッドの上。

「あの時の夢か……」