<グスタフ皇国・王宮・池のほとり・交流会6日目・朝7時20分>

クラリスは少し間を置いて
聞いた。
「あんたの力なら、
ミエルをさらうことくらい
簡単にできるでしょ」

「それは無理だ。
その時点でミエルの心臓は
つぶされてしまう。
そんなことはできない」

イ―ディスは力なく答えた。

「ねぇ、私たち<仮>契約だけど、お互い困った時は
助け合う関係よね。
今、私、(あるじ)として、
何ができるかな?」

クラリスは
ハンカチをポケットから出して、
イ―ディスに渡した。

「ミエルを自由にするには・・
(あるじ)が自分の意思で
心臓を返してやればいいんだ。

アンバーの気持ち次第だ。・・が・・俺はあいつを怒らせた」

「私が・・
アンバーを説得すればいいのかな?」
イ―ディスは
チラッとクラリスを見た。

(あるじ)同士で話が
つけば・・いい。
それしかないと思う」

クラリスはため息をついて、
遠くの平野を見た。

「私も・・
アンバーを結構怒らせちゃってるし・・できるかな?」
「期待してないよ・・」

イ―ディスも遠くを見て言った。

が、声の調子にいつもの皮肉屋の
感じが戻っている。
「期待はしていない」

イーディスは繰り返した。