「我が君、話を聞いてください! 私に、弁明の機会を!」

「寄るな、ケダモノ! あっちへ行ってしまえ!」

 扉の向こうから返ってくる、取り付く島もない言葉。

 けんもほろろにあしらうのは、言うまでもなく、異世界から召喚されし聖女にして魔王アリギュラである。

 毛布でも被って小さくなっているのだろうか。もごもごと若干聞き取りにくい声音で、アリギュラは強い意志を滲ませ答える。

「わらわは金輪際、おぬしと会わぬ。おぬしのようなケダモノとは、一切の縁を断ち切るのであるぞ!」

「これには海よりも深く山よりも高い、のっぴきならない事情があるのでございます! でなければこのメリフェトス、あのように無粋な流れで、恐れ多くも我が君の無垢な唇を奪うなど……」

「思い出させるな、この痴れ者がーーーー!」

 ぴっしゃあああんと、もう何度目かわからない『覇王の鉄槌』が、メリフェトスの上に落ちる。