確か、和夜が来た時良い友達だとかで嬉しそうに喋ってたな。



詳しく名前まで教えてくれた。

身内のことなら覚えはいい。



中性的な声音を作る。

覆う仮面のような完璧な微笑を浮かべて、尋ねる。



「和夜のお友達?」



ーー「!?」

ちなみに、聞いただけで友達なのは分かってる。



「こんな夜更けに、家に何か?」



人当たりの良い言い方をしたはずだが、何故か男子5人の顔は曇るばかり。



「…用がないなら」

「ちっ、力を貸して欲しいんです。お願いします!」




同時。

いや若干早かったかも知れない。



高めの声音。

容姿端麗の中性的な子が、そう言って近付いてきた。



「優…っ」

静止するよう促す動きをした。



優。

美崎優だったはずだ。



「…家に?」



「和夜の、姉の貴女にです」



「…へぇ」

姉と言い切るか。



私は今、ウィッグとカラコン、晒などで容姿を偽っている。

主に中性的に、男子よりに。



私を使用人と見る者が大多数だが、この子は違うらしい。



「時間が惜しいので言います。和夜が、拐われました」





「…拐われた」



声音が自分でもぐっと低くなった気がする。



「え…はい。でも相手の正体が分からないんです、どこに連れ去られたのかも」



拐われた。

和夜が…。



「それで、これを…」



スッと差し出されたのは、片方の蝶の羽を象った小物。

…あぁ、分かって攫われたんだな。



「見せれば分かってくれるって…」



あぁ、分かったよ。