……そう、お察しの通り。

 採用通知を手にしたとはいえ、かつての私の人生は終わりを迎えた。自分でもあっけない幕引きだったと思う。

 その後どういうわけか生まれ変わりを体験し、エリナ・フェブラリー侯爵令嬢として異世界で新たな人生を送ることになったわけだ。
 前世を思い出したのは「エリナは将来は何になりたいの?」という母からの質問がきっかけだった。
 よほど教師になれなかったことが未練だったのか、強い後悔は魂に刻まれていたのかもしれない。

 こうして私は生まれ変わった先でも教師を目指すことにした。
 そうでなければ人生に悔いなしとは言えない。きっとこの転生は、今度こそ夢を叶えろという神様の計らいに違いない!
 そう前向きにとらえることにした。

 しかし女性の、それも侯爵令嬢でもある私が教師を志すことはこの世界では珍しい。
 家族からはあらゆる心配をされてしまったが、いつか私が教師として大成することで恩を返せればという話に落ち着いた。

 それでも私はこの夢を諦めたくはない。

 たとえこの世界が魔法学園を舞台にした乙女ゲームの世界でも。

 たとえ自分が悪役令嬢と呼ばれるゲームの登場人物だとしても。

 悪役令嬢だって教師になってもいいよね?

 私は主人公のことをいじめたりしない。張り合ったりしない。目の敵にしない。攻略対象との恋を邪魔したりしない。

 だからどうか、私のことは放っておいて下さいよ!

 そう願うばかりだった。