「はよーっす、千景」


次の日、やたらとテンションが高く上機嫌な省吾が肩を叩いてきた。


気持ち悪いほどニコニコしてて、一ノ瀬絡みだということがまるわかり。


「朝、偶然会っちゃってさ〜! 挨拶したら、可愛く笑って『おはよ!』って……! もうキュン死するかと思ったわ」


デレデレとだらしなく鼻の下を伸ばしている省吾の周りには、ピンクのオーラが漂っている。


「今度デートにでも誘ってみよっかな」


なんて浮かれたことを言ってるけど、未だまともに一ノ瀬と話せもしないくせに、よく言う。


「もうすぐ一ノ瀬さんの誕生日だし、お祝いも兼ねて豪華ディナーにも招待したいな。そこでプレゼントの指輪を渡して告白するとか。ああ、ロマンチックすぎるっ」


「勝手に妄想膨らませてろ」


断言できる、省吾からは誘えないと。


付き合ってもいないのに、プレゼントに指輪とか……頭イッてんな、こいつ。

プロポーズじゃあるまいし……。


他のことでは天才的な力を発揮するのに、恋愛方面は道から大きく外れすぎててやばい。


万が一省吾と一ノ瀬がデートすることにでもなれば、こいつは本気で有言実行しそうだ。


見てて笑えるから、べつにいいけど。