「わかった?」


「は……、う、うん……っ!」


「よしよし、いい子」


「ち、かげ、さん……」


至近距離で頭を撫でられたら、わたしの心臓が持ち堪えられそうにありません。


「千景」

「へっ?」

「そう呼んで。昔みたいにちかちゃんでもいいけど、さすがにこの年でちゃん付けはなぁ」


「ち、千景、くん」

「千景でいい」

「ち、千景、くん」


だ、ダメです。

とてもじゃないけど、呼び捨てるなんてできっこない。


プスプスと音を立てて煙が出そうなほどの熱を持つ体が、今にもバクハツしてしまいそう。


「んー。ま、いっか。今はそれで」



やたらとそれを強調されて、目の前で爽やかに微笑まれる。


「ま、今日からよろしく」


そう言って優しく目を細めた千景くんから、わたしはいつまで経っても目が離せなかった。


まさか、久しぶりに再会した幼なじみが、男の子だったなんて──。




思いもよらなかった衝撃の事実。



こうして、わたしの新たな生活が幕を開けた。