「なんで私の部屋にいるの!?」


「家の前で羽音を待ってたら、お母さんが新聞取りに家から出てきて、名前を言ったら部屋に入れてくれた」


ちょっと、お母さん!?
普通、年頃の女の子の部屋に男の子入れる!?


お母さんに心の中でブツブツと文句を言う。


「顔、なんで隠すの?」


「だ、だって! パジャマだし、髪の毛ボサボサだし、寝起きだし……」


こんな姿、恥ずかしすぎて見せられないよ!


「えー、そんなの俺は気にしないけど」


「私が気にするの! ……ひゃっ!」


すると、急にかぶっていた布団がはがされ、腕を引かれる。


私のすぐ目の前には黒澤くんの顔があった。


自分の顔がカァッと熱くなっていくのがわかる。


「ちょ、なにして……っ」


「おはよ、羽音」


――ちゅっ。


黒澤くんは私の頬っぺたにキスをした。


その瞬間、全身が熱を帯びていく。


「な、な、なにしてんの!?」


「え? おはようのキス」


さ、そろそろ準備しなよ、と黒澤くんが立ちあがる。
私は頬を抑えたまま動けない。


「そんなにキス、嬉しかった?」


「ち、ちが……っ」


「顔、超真っ赤」


「……っ」


なにも言い返せない自分が悔しい。