「どこか痛いとこは?」

「体全体が痛いけど、辛うじて大丈夫だと思う」


あたしは笑里の言葉に、ホッと息を漏らす。

「何?あたし達、事故に遭ったの?」

「そうみたい」


2人で顔を見合わせ、運転手の状態を確認する。


「救急車呼ぶ」


あたしは携帯を取り出し、電話をする。

その間、笑里はタクシーから1度降り、運転席のドアを開ける。


「出血が多い」


確かに笑里の言う通り、明らかに出血が多い。


「とりあえず、今できる最善を尽くそう」


この人は、赤(トリアージの区分)だ。

それに顔色も、さっきよりも悪くなってる。


「脈が落ちてる」

「500。いや600近く、血を流してるかもしれない。救急車は、まだ?」

「来た!」


遠くから聞こえて来たサイレンに、僅かな期待を抱く。