「ガウガウ!」

「ま、まさか、その激しい気性、そのフォルム……人間界に転生された姉上様!?」

「キャンキャン!」

 訳:わかってんじゃないの!

「あの、お姉様。頭に響きますので人間言葉で話していただいてもよろしいでようか」

「あんた何やってんのよ! ちゃんと運命見てた!? あたしの大事なさーちゃんが手違いで運命変わってるんですけど!」

「え、ええ~、まさかそんな……」

 目を閉じ、意識の底を探った妹は次第に青ざめていく。

「も、申し訳ありません!」

 妹もようやく事の重大さに気付いていた。
 でも、でもね。どんなに悲しくても運命は巻き戻せない。だからせめて、誠意ある対応をするしかないのよ。
 誠意とはすなわち、生まれ変わるにあたって希望を叶えてやることだ。

「それで、さーちゃんの魂は?」

「え? えっと、それがぁ……」

「さっさと答える!」

「もう生まれちゃったみたいです!」

「生まれたって……何か特典はつけたんでしょうねえ? 望みを叶えてあげたり!」

 たとえばお姫様に生まれ変わりたいとか。魔法が使える世界に転生したいとか。
 問い詰めれば妹はそっと目を逸らしていった。

「前世の記憶は? せめて何か、チートくらいは付与したのよね?」

 目を泳がせ鼻歌を口ずさむ妹に、私の怒りは頂点に達していた。

「こんのっ愚妹! 今からでもなんとかなさいっ!」

「無理ですよ姉上様~! 今から出来ることなんて、多少普通の人間より能力の上限を上げることくらいしか」

「すぐやる!」

「はい喜んでえ~!」

 急ピッチでの作業、しかもこの愚妹の仕事だ。不安は拭えなかった。