気を取り直して、ヒナと女子トイレの鏡の前に並んで髪を直したり、リップ塗ったり。



「で。なんで恋々はこの前のデート断ったの?言い出しっぺだったのに」


ヒナにそう突っ込まれてしまった。


「んー、ちょっと……幼馴染と用事が……」


といいながら頭にどばぁっと浮かんでくるのは朱里くんの唇があたしの首に吸いついたあの映像。


ファンデを塗ったくった首元のキスマークに思わず手を当てる。



なんて説明しようか、口の中でもごもごしていたら。



「わかった。幼馴染くんがヤキモチやいたから行けなかったんでしょ?」



ヤキモチ?

首を傾げると、ヒナに呆れっぽいため息をつかれた。



「そのスマホケース作ったの彼なんでしょ?ふうちゃんに対するヤキモチがにじみ出るような写真の貼り方してるじゃん」




……ふうちゃんにヤキモチ?



「あは。そういうんじゃないよ」


「じゃあどういうことなの?」


「朱里くんはね、あたしに先を行かれるのが嫌なんだよね」



その気持ちはわかるよ。

だってあたしもそうだから。



朱里くんが先を行くのは、きわめて悔しい。




「ふうん……。へんなの」



へんじゃないよ。