「え」

天音さんが驚いた顔をした。


「いいですよ、昼ごはんくらい。僕買います」

「でもそれは何か申しわけない……じゃあやっぱ私が…」

「あっ、じゃあさ! 4人で学食行こーぜ! そんで、この子の分3人で割り勘! な!」

となりの早瀬がそう提案してきた。


「あー、それいいかも」

「そうと決まれば学食行くぞー」

早瀬はさっさと講義室を出て、天音さんもそれに続いた。



「…行きましょう、学食」

「……」


目の前の彼女は黙り込んで俯いていた。


「…あの、」

「何か、申しわけなくなってきました…」


彼女はそう言って、黄色いマウンテンパーカーのポケットに手を突っ込み、キーケースを取り出した。



「私、家戻って財布取ってくるので、先行っててください」

「行きましょう、天音さん達待たせちゃうから」

「え、でも…」

「もう決まったことだし、早く行かないと昼休み終わっちゃいますよ」


さっきまで駄々をこねていた人とは思えない…。



「……解りました…」


そして僕と彼女も講義室を出て、急いで学食へ向かった。