「なぁ詩織」
「なに…っ!?」


改まって私の名前を呼ぶものだから、一体何かと思えば。

突然指で頬を撫でられた。


「すげぇ無防備」
「き、今日の紘毅くんってば本当に変…」

「詩織が原因だったりして、な?」
「……えっ」

「なぁ、こっち向けよ詩織」


紘毅くんの低い声が耳元で囁かれる。
思わず肩がビクッと跳ねた。


「ね、寝る…!」
「頑固だなぁ、純粋な詩織ちゃんは」

「…っ、気持ち悪いよ?」
「嫌ならベッドから降りるんだな」

なんて言いながら、力が強くて離れることはできない。


「離す気ないでしょ」
「んー、まあな」

「もういい…紘毅くんってお酒に弱いんだね」


明日には忘れてるくせに。

こんなにも人をドキドキさせておいて、忘れるなんてずるい。


紘毅くんに抱きつかれているせいでしばらく眠れなかったけれど、気づけば意識を手放していた。