「体験なんて、そんな…キスは好きな人とするもので」

手慣れている感じが嫌だ。
私はこんなにも乱されているというのに。


「紘毅くんの尻軽男、ダイキライ」
「詩織だからいいんだよ、キスしても」

「……っ!?」


また期待させるような言い方。
そして私の髪を撫でるように触れてきて。


「今日、何か変だよ…?」
「さぁな。先手打ったのはそっちじゃねぇの」

「えっ…」

「そろそろ寝るか。
もうイヤラシイ夢、見るんじゃねぇぞ」


それ以上紘毅くんは私に触れることはなく、立ち上がった。

先ほどの言葉が少し気になるが、聞き返すことはしない。


少し心を落ち着かせてから歯を磨くため、洗面所へと向かった。