呆然とした状態で暫くその場に座り込んでいたが、智大の言葉を理解したと同時にのろのろと立ち上がる。
覚束ない足取りでリビングを出て寝室に戻ると、藍里は涙を溢さないように唇を噛み締めてベッドに突っ伏した。

「ど……して……」

自分が何をしたのか、何故あんな言い方をされるのか、嫌われてる原因も、結婚して一緒に過ごす意味も分からない。

突き放されては然り気無い優しさを与えられ、優しさに勘違いして、そこまで嫌われてないのでは?と期待してはまたすぐに突き放される。
智大が何をしたいのか、何をしてほしくて、何をしてほしくないのかが全く分からなかった。

今の藍里の心はぐちゃぐちゃで、まるで嵐のようだった。

「もう……やだ……どうしたらいいの……」

結婚して一年。
ギリギリの均衡を保っていた心はこぼれ落ちた弱音と共に大きく傾いてしまった。

藍里なりに何度か勇気を出したつもりだった。
それでも駄目なのなら、もうどうすることも出来ない。

指が白くなるほど毛布を強く握り締め、胸の痛みに耐える藍里は限界を感じていた。

そして同じ頃、藍里が出ていったリビングのソファで座ったままの状態で力なく俯き、片手で前髪をくしゃりと掴んだ智大は激しい自責の念にとらわれていた。