「それじゃ、力。後は任せるよ」

「はい、責任持ってお預かりいたします」



本家の玄関先にて。


わたしは託児所に預けられる子どものような立ち位置で見送られようとしていた。




「おい、力」

「はい」

「壱華に不用意に触るなよ。
それから、万が一惚れたら承知しねえからな。分かったか」



すると志勇が前へ出てきて何やら釘を刺している模様。



「っ、はい!もちろんでし!」



……でし?


必死に応答するも、最後の最後で噛んでしまった力さん。


志勇は噛んだな、とツッコミそうな寸前で彼から目を放した。



「まあいい、じゃあな壱華。
日が落ちる前には迎えに来る」

「はい、いってらっしゃい。
颯馬さんも剛さんも、お気をつけて」

「はい、行って参ります」

「ありがとう壱華ちゃん、頑張ってくるね」



今生の別れと言わんばかりにかっちりと挨拶する堅物剛さんと、悪ふざけ全開にウインクをかますチャラ男颯馬さん。



「黙れ」

「痛っ!?」



ふざける彼に華麗な蹴りを入れる志勇。


あまりのスピードに心底驚いたけど、すごく綺麗に決まったことに感動。



「マジかよ……いきなり蹴ることないだろ、兄貴~」



でも、苦悶の表情で志勇に泣きつく颯馬さんはお気の毒だ。


ちょっとふざけただけなのにとんだとばっちりを受けるなんて。


なんだか自分の身より彼のこれからが心配になってきた。