ケータイ小説 野いちご

闇色のシンデレラ

「そうか、仕方ねえな。俺も一緒に入ってやるよ」

「は?」

「ほら、さっさと行くぞ。俺がすみずみまで洗ってやるから」



満面の笑みを携え、なぜかわたしの手を引き始めた荒瀬さん。


とりあえず、この人が笑うとロクなことがないと学習した。



「ひ、ひとりで入ります!」



腕を引っ張られ、ドアの前まで来たところで、やっと声が出た。


同時に手が小さく震えてることに気づいた。


光冴の手と全然違うのに、触られるのが怖い。



「……チッ、分かったよ。さっさと行って来い」



無言を通していたけど、察してくれたらしい彼。


そっと手を放し、代わりに優しく背中を押した。


よかった。荒瀬さんも話せば分かるタイプ───



「おい、何突っ立ってんだ。
10分以内に上がらなきゃ襲いに行くからな」



というわけではないらしい。

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