『もう一度、よく思い出してみて。彼女達が襲われたのは17時00分、警備員が通報したのが17時10分』
「それが何だ?」
『仮に、中に犯人が居たとする。犯人は、襲った直後逃げる。校舎に1つしかない階段を使ってね。そのためには、廊下に出なくてはいけない。でも、そこには警備員が居て逃げ切れない。
そこで、犯人は彼女達を襲った5階の教室から飛び降りて逃走した』
「そんなのありえねぇ」

話を整理していく中で、陽一は人間業にしてはあまりにもかけ離れている事実に驚きを隠せないでいた。

『そう。5階の教室の窓の鍵も壊されていないから飛び降りられないし、廊下に出た時点で警備員と居合わせる。例え、携帯に集中していたとしても正面から逃げてくる犯人に気付くはず。もし考えるなら、警備員は共犯者だった仮説を立てられる。でも、今までの話は犯人が人間ならっていう話』
「もし、犯人が悪霊だったら襲うことは出来る」

犯人が悪霊だからこそ、普通の人間が理解できない事が起きていると考えた。

『だけど、悪霊が犯人でも不審な点があるの。一つ目は、誰も死んでいない。普通なら、悪霊に襲われれば無差別に殺される。でも現に彼女等は、重傷を負いながらも一命を取り留めた。そして、彼女たち全員霊感も特殊能力もない一般人。二つ目は時間よ。悪霊は夜から活動を始める。日も沈んでない夕方から活動をするなんてありえない』

「確かに、この前俺が悪霊に襲われた時の条件と違ってる。じゃあ、一体犯人は誰なんだ?」

一瞬見えた解決の糸が見失われた。事件は起きているのに、犯人が全く見つからず陽一たちはさらに混乱していく。

『そして、この事件で全く分らないのが生け贄こっくりさん。これさえ分かれば、事件が解決できると思うの』

メリーは生け贄こっくりさんが引っかかり、難しい顔つきになる。

メリーと同じく疑問に思う陽一。生け贄という言葉から連鎖すると、必ず生け贄が必要。しかし、こっくりさんは自分の知りたい答えを教えてくれるモノとして世間に知れ渡っている。

やはり、この2つが共通する点が見つからないのだ。ふと陽一は、生まれた疑問をメリーに尋ねる。

「そもそもなんで、メリーたちも知らない生け贄こっくりさんの存在を中学生の奴らが知ってたんだ?」
『それが私にも分らないの。そもそも、生け贄こっくりさんを知ることが出来たのは、縄で縛られていた少女が奇跡的に意識を取り戻して発した言葉だったらしい』
「なら、その子に教えてもらえばいいじゃないか?」

知っている中学生がいるなら話は分かる。これで解決されると思ったが---

『それは出来ないわ。彼女はその言葉を発した後、再び意識不明になったわ』

再び、話は振り出しに戻ってしまった。