ケータイ小説 野いちご

霊感少年とメリーさん




「い、今から何を、始めるんですか?」


先ほどとは違い、教室が異様な空気に包まれ重苦しい。


今から西岡達が何を始めようしているのか分からず、得体の知れない何かに恐怖を感じて思わず敬語で尋ねる早河。


早河の様子を見た西は、にこっと妖しく笑みを浮かべて口を開く。


「今から、生け贄こっくりさんをするの」


「生け贄、こっくりさん?」


早川は状況を理解することが出来ず、西岡の言葉を一つずつ確認するように繰り返した。


「そう。生け贄こっくりさんに生け贄を捧げれば、願いを一つだけで叶えてくれるんだって。面白そうでしょ?」


「え、ちょっと待って」


ゲームを楽しむかのように話し続ける西岡を見て、驚きが隠せなかった。西岡が、自分をこっくりさんに生け贄を捧げようとしているのを理解し、思わず奥歯を食いしばった。


「どうして、どうして……こんな事をするの?!私が、一体西岡さん達に何をしたの?!なんで、私はずっと貴方たちにいじめられるの?!」


今まで、西岡達の恐怖で言えなかった本音をぶちまける。早河はただ知りたかった。何故、自分をいじめ続けるのか?そして、嘘くさい心霊現象に自分を遊びで生け贄として使うのか?


その答えを知りたい思いが、今まで言えなかった恐怖を勇気へと絞り出した。


「そんなの決まってるじゃない。早河という存在がうざいから」


西岡の言葉に、早河は目を大きく開けた。この人は一体、何を言っているんだろうと。そんな早河をよそに西岡は話し続ける。


「あんたはめんどくさくて冗談が通じなくて、後会話が噛み合わないから」


「ちょっと待って!私、西岡さん達と今年初めてクラスになって、そんなに話した事ないよ?!」


西岡の言っていることが理解出来ない。もともと友達で仲間はずれされ今に至るのなら、この状況を理解出来る。


だが、西岡たちとはいつも居るグループでもないし、これまで会話をしたのは数回だけ。だからこそ、西岡の言っていることを理解することが出来ない。


早河が純粋に思った疑問に対し、西岡はこいつは何を言ってるんだ?と蔑(さげす)んだ目で早河を見つめ口を開いた。


「あたしは、あんたのそういう所が嫌いなのよ。後、空気が読めない所も」


真剣に問う早河に対して、西岡は蔑んだ目のままで明るく無邪気に答える。その答えに早河は、たったそれだけの理由で自分がいじめられていたのかと絶望から怒りが溢れ出した。


「何をそれ……だったら、私に構わないで「黙れよ」


早河の発言に腹を立てた西岡。全てを見下した顔で、早河の腹に蹴りをいれた。


「気に入らない奴が、目の前で存在するのが嫌なの。だからね」


西岡の手から、一枚の十円玉が現れた。その十円玉を早河に見せびらかすように、見せつける。十円玉は、早川を嘲笑うかのように怪しく光った。


「あたしの為に消えて」


笑顔で残酷な言葉を発する西岡を合図に、3人は人差し指を10円玉に置いて口を開いた。


「「「生け贄こっくりさん、生け贄こっくりさん。生け贄を捧げます。どうぞ鳥居からお入り下さい」」」


3人がそう唱えた途端、3人の人差し指を乗せたまま意志でもあるかのように十円玉がすすと五十音の方へと動き出す。十円玉は、「そ」に止まった。しばらくしてから、またすすっと動きだし「の」に止まった。次は、「ね」へと動き出す。


3人は、十円玉が勝手に動き出したのに驚きながらも、不思議な現象に興味と興奮が掻き立てる。そんな光景を見続けている早河にしては、3人の行動は異常に思え胃から胃液が逆流してきそうな程気持ち悪がっていた。


そんな早河をよそに、3人はこっくりさんが示す言葉を必死に追いかけていた。そして、こっくりさんが示す言葉が終わったのか「た」に止まってから一向に動き気配がない。


西岡を見ると、肩を小刻みに震えていた。しかし、嬉しそうにニヤッと表情を浮かべて口を開いた。


「そ、の、ね、が、い、き、き、う、け、た」


その願い聞き受けた----。確かに、早河にはそう聞こえた。それと同時に、あぁ自分はもう居なくなるんだと絶望を知らせる合図だった。


「ねぇねぇ愛子。何をお願いしたの?確か、この鳥居を貼った人だけが願いを叶えてくれるのよね?」

「そうそう!いい加減あたしらに教えてよ!」


雪菜と理香は、西岡が何を願ったのか知らなかったのか興奮して西岡に尋ねる。西岡は待ってましたと言わんばかりに腕を前に組む。


「実は、うちら3人に理想の男が現れますようにって願ったの」

「えっ?!それ本当!本当に叶うならマジ嬉しいんだけど!」

「本当なの愛子?本当だったら嬉しいな」


西岡の願いに喜ぶ理香とその願い本当にかなったらいいなと思っている雪菜。


「雪菜何言ってるのよ!本当に、生け贄こっくりさんに生け贄を捧げたら願いを叶えてくれるんだから。あたしの言っていることが信じられない?」


雪菜の発言を聞いた西岡は、信じてよと言わんばかりに少しだけ頬をぷくっと膨らませる。


「ごめんごめん!疑ったつもりは全くなかったの。でも、嬉しくてさ。愛子が私たちの分まで願いをしてくれてた事が」


雪菜は嬉しそうに微笑む。友達が自分の幸せも願ってくれていたのが純粋に嬉しく思えた。


「当たり前でしょ?雪菜も理香もあたしにとっては大切な仲間なんだから」

「愛子ーー!」

西岡の嬉しい発言に抱きつく理香。そんな理香をやれやれと西岡は抱き留める。


なにこれ気持ち悪い……。


そんなやり取りを見続けている早河にとっては、3人の友情を確かめ合う光景に気持ち悪さを覚える。


この3人は、本当に私のことなんてどうでもいいんだ。自分たちだけ良ければ本当にいいんだ……。


ただ、絶望と怒りと呆れが入り交じった眼差しで、目の前の光景を見続ける早河。


そして、3人のどうでもいい願いのために、生け贄みにされた自分自身に呆れて嘲笑う。


あぁ、もうどうでもいいや。早くこんなくだらない遊びを終わらせてほしい……。


今の早河は、あまりにもの絶望に生け贄こっくりさんが本当にいるのかさえ判断が出来ないほど追い詰められている。


「だから、この願いが叶ったらトリプルデートしよ----」


ドサッ。


鈍い音と共に、それは突然起きた。


西岡が楽しそうに話している表情のまま、床にうつ伏せの状態で倒れた。それと同時に、ポタポタと早河の頬に雨粒に似た物を感じる。


それが何なのか早河は確認が出来ず、突然の出来事に不安になり、息が苦しくなるほど心臓が速まり、おまけに嫌な予感がする。


一刻でも早く、嫌な鼓動を抑えるために、この原因である床にうつぶせになった西岡を見つめた。

白い半袖の制服に紅いシミが広がっていくのに気がつく。

その状況を見て、早河はふるふると怯えながら、頬に付いた不気味な液の正体が分かり、


「いやああああああーーーー!!!」


身動きが取れない早河は、ただ叫ぶ事しか出来なかった。




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